「ガムテープ」は和製英語?

SNS で流れて来る記事の中に、「ガムテープは和製英語です! packing tape って言わないと通じないので注意!」という趣旨のがありました。「gum tape って言ったら『歯茎テープ』で意味不明だよ!」とも。

「そうだっけかなぁ?」と思って和英辞典引いたら、packing tape も載ってるけど、gummed tape も載ってる(^^;)。ネットで検索かけてみたら、アメリカの amazon さんでも商品名 gummed tape で並んでる。さすがに gum tape っていう表記はないけど、元が gummed tape なら和製英語とは言えなそう。

「元が gummed tape なら、カタカナ語は『ガムド・テープ』になるんじゃないの?」と思う方もいらっしゃるでしょうが、実は gummed の -ed は発音されないことの方が多いです。英語の発音には暗黙の了解がいくつもあって、そのうちのひとつが「単語末尾の破裂音は破裂させない」というもの。さらに、「破裂音が2つ重なったら片方しか発音しない」というのもひとつ。gummed tape は発音記号で表記すると [gʌmd teip] となりますが、[d] は単語の末尾だし直後に破裂音の [p] もあります。理由が2つもあるので、発音しない人がほとんどなのです。

なんてことを考えてたら、30年以上前の記憶がなんとなく甦ってきました。私が勤めていた翻訳会社にはいろんな国籍の英語のネイティブスピーカーがいましたが、ある日、ガムテープを前にして「お前はこれなんて言う?」なんてお互いに聞き合ってたことがあったような。地域ごとに呼称はかなり違ってて、盛り上がっていたような。そんなことがあった気がしないでもない。いや、ガムテープじゃなくて段ボールか接着剤だったかな?昔過ぎて確かめようもありませんが(笑)。

実は、こういう日用品の呼称は地域差があるのが当然で、「ネイティブなら誰もがこう呼称する」とは言い切れないのです。同じ言葉をあるネイティブは「和製英語だ」っていって、あるネイティブは「国でもそう言ってる」っていうのは、ごく普通にあることなんですね。日本国内だって、「マクド」と「マック」の違いみたいなのがあるじゃないですか。その何倍もの距離があるんだから、地域ごとに標準的とされる呼び名が違うのは、当たり前なんです。かくいう千葉県人の私も、「青なじみ」は方言だと言われて「えっ」と思ったことがあります。確かに国語辞典に載ってませんでした。「青あざ」が標準語らしいですね(^^;)。

まずいのは、自分の赴任先や留学先で経験したことや自分の出身地の表現が世界標準だと思い込んで、他の地域の表現を「そんな言い方しない」と否定してしまうこと。辞書を引いたりネットで検索をしたりすればある程度目星は付くのですから、確認の手間は惜しまないようにしたいものです。

ちなみに、アメリカおよびイギリスの amazon さんでの商品名は、以下のようにかなりバリエーションがありました。どの呼称がどの地域で普通なのか、ということまではわかりません。でも、実際に使われている表現かどうかは、30年前に比べるとかなり簡単に判断できるようになりましたね。

  • gummed tape
  • packing tape
  • packaging tape
  • framing tape
  • kraft tape
  • kraft paper packaging tape
  • kraft paper gummed tape
  • gummed paper tape