ちゃんと褒めてください…
メジャーリーグの大谷選手に、第一子が生まれたとの報道がありました。おめでとうございます!明るいニュースは、明るくていいなぁ。
ただ、平野的にはちょっと残念だったことがあるんです。それは、テレビ各局の報道で、大谷選手のメッセージにあった my loving wife というフレーズが誤訳されていたこと。これね、「愛する妻」って訳しちゃダメなんですよ。正しくは「愛にあふれた妻」で、定番の意訳は「献身的な妻」。妻に感謝し、褒めている表現なのです。
これ、恐らく ing の解釈の誤解ですね。ちょうど、1週間前のジャッジ先生の資料を借りたセミナーでも解説しました。「~する/~している」⇔ ~ing を機械的に相互変換していると、誤訳になることも多いのです。my は「私の」、loving は「愛する」、wife は「妻」、というようにバラバラに訳してつなげてしまうと「私の愛する妻」となるのですが、3語まとめてのフレーズとしては、その意味には決してならないのです。
loving はこの場合は形容詞で、「愛情がある」「愛にあふれている」の意味になります。my loving wifeは「愛情のある我が妻」「愛にあふれている我が妻」であり、「私が愛する妻」ではありません。Merriam-Webster英英辞典には painstaking と同義との記載もあり、「家族への愛にあふれ献身的である」という意味合いで使われることが多い表現なのです。
loving を動詞の ing 形と考えることももちろん可能ではあります。その場合も、この my loving wife という語順では love は自動詞ですから、「愛される」ではなく「自ら愛情を人にかける」の意になります。(loving my wife という語順なら、他動詞で「妻を愛すること」という意味になりますが。)
今回の誤訳の元は、SNSの自動翻訳かもしれません。AI翻訳でも同様の訳になる、という報告も仲間から受けています。今回の件も含め、AI翻訳では「自然な日本語に見えて中身は誤訳」というパターンも結構見られるので、要注意です。「愛する妻」という自然な日本語を学習して、それをそのまま loving wife という英語の訳に当てている、というようなことではないかと想像しています。
ちなみに、「愛する妻」は my beloved wife という別の表現になります。beloved は「愛されている」という形容詞。『「愛されている」なら loved でいいんじゃないの?』と思う方もいるでしょう。でも、そこにも落とし穴があります。my loved wife だと故人の意味に取られやすいんですね…。大きな誤解を生じさせかねません。
日常で良く使う単語だからこそ、そこには慣用的な意味が生じます。しっかりと意識して英文解釈に臨みたいものです。AIに丸投げするのは危ないですし、なによりも自分でやった方が楽しいですから。
- my loving wife: 愛にあふれた妻/献身的な妻
- my beloved wife: 愛する妻(存命)
- my loved wife: 愛する妻(故人)